能因と節信

[ 袋草紙 ]能因と節信


加久夜の長の帯刀節信は数奇者なり。

はじめて能因にあひて、かたみに感緒有り。

能因言はく、「今日見参の引出物に、見すべきもの侍り。」とて、

懐中より錦の小袋を取り出だす。

その中に、鉋屑一筋有り。

示して言はく、「これはわが重宝なり。長柄の橋造りし時の鉋屑なり。」と云々。

時に、節信喜悦甚だしくて、また懐中より紙に包めるものを取り出だす。

これを開きて見るに、涸れたるかへるなり。

「これは、井堤の蛙に侍り。」と云々。

ともに感嘆して、おのおのこれを懐にし、退散すと云々。

今の世の人、をこと称すべきや。

いにしへの歌仙は、みな好けるなり。

しかれば、能因は人に、

「好き給へ。好きぬれば、秀歌は詠む。」とぞ申しける。


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