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 灘高校、入試問題、国語

   白河院の御時、九重の塔の金物を、牛の皮にて作れりといふこと世に聞こえて、

  修理したる人、定綱朝臣、事にあふべき由聞こえたり。仏師なにがしといふ者を

  召して、「たしかにまこと嘘言を見て、ありのままに奏せよ。」と仰せられければ、

  承りて上りけるを、なからの程より帰りおりて、涙を流して、色を失ひて、「身のあ

  ればこそ君にも仕へ奉れ。肝心うせて、黒白見えわくべき心地侍らず。」と、言ひ

  もやらずわななきけり。君聞こしめして、笑はせ給ひて、ことなる沙汰もあらでや

  みにけり。かの韋仲将が、陵雲台にのぼりけむ心地も、かくやありけむとおぼゆ。
  
   時の人、いみじき烏滸のためしに言ひけるを、顕隆卿聞きて、「こやつは、かな

  らず冥加あるべきものなり。人の罪蒙るべき事のつみを知りてみずから烏滸のも

  のとなれる。やむごとなき思ひはかりなり。」とぞほめられける。まことに久しく君

  に仕へ奉りて、事なかりけり。

  (注)・ 事にあふべき由 … 罪に処せられるべきこと。

     ・ 韋仲将 … 中国の三国時代に韋仲将という書家が、陵雲台という建物の

            高い所につりあげられて額の字を書き、書き終わったときには恐

            怖のために白髪になってしまったという故事。

     ・ 烏滸 … 愚かなこと。

     ・ 冥加 … 神仏の加護。


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