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  行く蛍・伊勢物語

[ 行く蛍 ]

昔、男ありけり。人のむすめのかしづく、いかでこの男にもの言はむと思ひけり。

うち出でむことかたくやありけむ、もの病みになりて死ぬべき時に、

「かくこそ思ひしか。」と言ひけるを、親聞きつけて、泣く泣く告げたりければ、

まどひ来たりけれど、死にければ、つれづれとこもり居りけり。

時は水無月のつごもり、いと暑きころほひに、宵は遊びをりて、夜ふけて、やや涼しき風吹けり。

蛍たかく飛び上がる。この男、見臥せりて、


   ゆく蛍雲のうへまでいぬべくは秋風ふくと雁に告げこせ

   暮れがたき夏の日ぐらしながむればそのこととなくものぞ悲しき

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