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 今物語・うしろむき

「うしろむき」(今物語)

このころの事とかや、ある田舍人、優なる女を語らひて、

都に住みわたりけるが、とみの事ありて、田舍へ下りなんとしける。

その夜となりて、この女、例ならずうちしめりて、

うしろむきて寢たりけるを、男、いたう恨みてけり。

「いつまでか、かくもいとはれまゐらせん。

ただいまばかり、向き給ひてあれかし。」と言ひけるに、この女、

  いまさらにそむくにはあらず君なくてありぬべきかとならふばかりぞ

と言ひたりければ、男、めでまどひて、田舍くだりとまりにけるとかや。

いとやさしくこそ。



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